さまざまな食品に使われており、私たちの生活に欠かせない「小麦」。
パン、うどん、ラーメン、ケーキの他にも、味噌・醤油といった調味料や、カレー・シチューのルウ、唐揚げの衣など、普段何気なく食べているものにも含まれています。
自宅で料理やお菓子づくりをする方は、小麦を買ってきて使う機会も多いでしょう。
それでは皆さんは、小麦を買うときに何を基準に選んでいますか?
身近な存在となっている小麦ですが、どんな種類があるのか、種類によって特徴や味の違いはあるのかなど、よく知らない方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、創業70年以上の歴史を誇る津村製麺所が、国産小麦と輸入小麦の違い、国産小麦の種類と特徴などを詳しく解説します!
ぜひ今後の小麦選びにお役立ていただければと思います。
目次
国産小麦と輸入小麦
最近注目が集まっている国産小麦ですが、日本に流通している小麦のうち何割が国産かご存じでしょうか?
国産小麦について、農林水産省から以下の情報が発信されています。
小麦は約9割を外国から輸入しています。
国内産小麦では量や質が満たせない需要分を政府が国家貿易により外国産小麦を計画的に輸入しています。
<過去5年の平均流通量(2016~2020年)>
国産小麦:82万トン
輸入小麦:488万トン
うち、アメリカ(49.8%)、カナダ(33.4%)、オーストラリア(16.8%)で、この3カ国がほとんどを占めています。
このことから分かるように、日本に流通している小麦のうち国産小麦は10%程度なのです。
国産小麦を使用している会社や店舗は、強いこだわりを持って材料を選んでいるということがうかがえます。
それでは、国産小麦と輸入小麦にはそれぞれどんな特徴があるのでしょうか。
国産小麦の特徴
国産小麦には以下の特徴があります。
- グルテンが少なくボリュームが出にくい
- こねる際にベタつきやすい
- 灰分が多く小麦の風味が強い
- 食感がもっちりしている
日本で栽培される主な国産小麦はタンパク質の割合が低く、グリアジンとグルテニンの量も少なくなり、その結果こねてもグルテンがあまり生れません。
他には、「安全面の不安が少ない」という点も国産小麦の特徴として挙げられます。
要因としては以下のような内容があります。
- 小麦に残留する「グリホサート(除草剤の主成分)」の不安が少ない
- 残留量が多くなる「ポストハーベスト農薬」が使用されていない
- 日本国内では「遺伝子組み換え小麦」の栽培がない
海外では、グリホサートを主成分とする除草剤の散布や、保管・輸送中の害虫被害を防ぐために農薬を散布する「ポストハーベスト」、遺伝子組み換えによる小麦の栽培などが行われていますが、日本ではこれらを行っていません。
もちろん輸入時には残留農薬の検査を行い、食品衛生法に照らし問題のないことを確認していますが、国産の小麦はより安全面の不安が少ないと言えます。
輸入小麦の特徴
輸入小麦には以下の特徴があります。
- グルテンが多くふっくらボリュームが出やすい
- まとまりやすくこねやすい
- 灰分が少なく風味はあっさり
- 食感がふんわりしている
国産小麦はタンパク質の割合が低くグルテンが少ないのに対し、輸入小麦はタンパク質が多くグルテンが多く生まれます。
ボリュームを出す必要があるパンづくりなどにおいては、日本ではまだまだ輸入小麦が主流となっています。
国産小麦と輸入小麦の特徴まとめ
国産小麦 | 輸入小麦 |
---|---|
グルテンが少なくボリュームが出にくい | グルテンが多くふっくらボリュームが出やすい |
こねる際にベタつきやすい | まとまりやすくこねやすい |
灰分が多く小麦の風味が強い | 灰分が少なく風味はあっさり |
食感がもっちりしている | 食感がふんわりしている |
安全面の不安が少ない |
国産小麦の生産地
国産小麦と輸入小麦の特徴や違いが分かったところで、ここからは国産小麦について詳しく見ていきましょう。
まずは国産小麦の主な生産地を知っていただくために、令和4年における都道府県別小麦生産量の割合をグラフでまとめてみました。

令和4年の国内での小麦生産量が合計99万3,500トンあるなかで、圧倒的1位は生産量61万4,200トンの北海道、そして2位福岡、3位佐賀、4位愛知、5位三重となっています。
現在、国産小麦の6割以上を北海道産が占めているということになります。
北海道産小麦の収穫量が多い理由については、北海道の気候が小麦づくりに適していることが大きく影響しています。
収穫期に雨が少ないうえに夏も涼しく、乾燥した北海道の気候は、小麦の栽培に最適です。
また北海道の小麦は大豆と隣合わせで作っているところが多く、連作障害が起こりやすい小麦にとって、小麦と大豆を交互に栽培できる広い土地があることもプラスに作用してると言えるでしょう。
国産小麦の種類
続いては、国産小麦の種類とそれぞれの特徴をご紹介したいと思います。
数ある国産小麦から9種に厳選し、何に使うのに適しているのかも含めお伝えするので、ぜひ家庭で取り入れる際の参考にしてくださいね。
1、きたほなみ
「きたほなみ」は、北海道産小麦の主力品種。
大量生産されており価格が安いため、薄力粉や中力粉に加工されたり、強力粉とブレンドして使われれたりすることも多いです。
耐病性に優れ、小麦粉の色・性質・食感なども良いことから、パン、麺、菓子づくりで高く評価されています。
2、ゆめちから
「ゆめちから」は、コムギ縞萎縮病に対して強い抵抗性を持つことから、北海道初の超強力小麦優良品種に認定されました。
中力粉とのブレンド適性に優れており、パンや中華麺に使用されることが多いです。
他の品種と比べてとても多くグルテンを含むため、よく膨らみ、ボリュームを出しやすいことで知られています。
3、きたもえ
「きたもえ」は粉色が良く、麺にしたときに色が白く美しいことが特徴です。
うどんこ病や小麦縞萎縮病といった病気に強く、同病が発生しているエリアでも収穫量や品質に影響することがありません。
作付面積が少なく収穫量は多くありませんが、根強く支持されている品種です。
北海道で多く栽培されている小麦「きたほなみ」は、「きたもえ」を人工交配して作られました。
4、ミナミノカオリ
「ミナミノカオリ」は、アルゼンチンの小麦品種を親に持ち、西日本でも栽培できるパン用の小麦です。
西日本初のパン用小麦である「ニシノカオリ」に比べて製パン性が大幅に改良されました。
製パン適性が良い強力粉になり、タンパク質を多く含みます。
中華麺やそうめん、醤油の原料にも適しています。
5、キタノカオリ
「キタノカオリ」は北海道産の強力粉で、2003年に優良品種に登録されています。
北海道の「ホロシリコムギ」と、ハンガリーの「GK Szemes」という小麦を掛け合わせて作られました。
国産ならではの風味の豊かさと、外国産ならではの優れた製パン性を兼ね備えています。
パンにしたときのモチモチ感と甘みが特徴です。
6、さとのそら
「さとのそら」は埼玉県や千葉県などで栽培されている品種です。
従来の主要品種であった「農林61号」の欠点を克服した後継品種として位置づけられ、千葉県の小麦奨励品種に採用されました。
きれいな色合いと、焼き上げたときのさっくりとした食感が特徴で、主に菓子づくりに使われています。
7、はるゆたか
「はるゆたか」は北海道産の小麦で、国産品種の中でも高タンパクの強力系品種です。
パンや麺にすると美味しく、豊かな香りと甘味があり、他の品種とはまるで違うもっちり食感を楽しめます。
収穫量は少なく、病気や雨にも弱いため農家が離れていき、その希少性から「幻の小麦」とも言われています。
8、春よ恋
「春よ恋」は、「はるゆたか」の弱点を克服し誕生した後継品種です。
主に強力粉に加工され用いられます。
製パン性に優れており、フワフワ感とモチモチ感という相反する性質を持たせることができるとして注目を集めています。
甘味や旨味が強く、小麦本来の味わいを楽しめます。
9、シロガネコムギ
「シロガネコムギ」は関東から西で栽培されることが多く、埼玉県、静岡県、兵庫県、鳥取県、佐賀県では奨励品種に指定されています。
穂が倒れにくい、病気に強い、製粉性に優れているなどの特徴があります。
主に菓子づくり、麺づくりに使用されており、特に焼き菓子では歯切れの良い焼き上がりに定評があります。
津村製麺所の小麦選び
弊社 津村製麺所では、主原料を北海道産小麦に厳選し製品づくりを行っています。
イチオシ商品の「生ひやむぎ」は、北海道オホーツク産小麦「きたほなみ」を100%使用。
保存料・添加物を使用せず小麦粉、水、塩のみで製造するなかで、小麦粉の品質を非常に重要視しました。
寒暖差が高いオホーツクで育った「きたほなみ」ならではの、豊かな風味と抜群のコシが麺に表現されています。
「生ひやむぎ」については、以下のページで詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。
生ひやむぎだから、ごちそうに変わる!津村製麺所の生ひやむぎまた北海道内で生産された小麦「きたほなみ」に厳選して仕上げたうどんや、北海道のなかでもオホーツク産に厳選した「春よ恋」小麦を使用したラーメンなど、とことん原料にこだわった麺をお客様へお届けしています。
収穫時期に雨が少なく、安定的な品質と収穫量が望めるオホーツク地域で生産された小麦だけを使用した製品づくりに尽力。さらには清里町産小麦のみを使った製品を生むことにも成功しました。
まとめ
国産小麦と輸入小麦の違いや、国産小麦の生産地、種類、特徴などを詳しく解説しました。
国産小麦、輸入小麦、そして国産小麦の銘柄によってもさまざまな特徴があることを知っていただけたかと思います。用途にあわせて適したものを使用してみてくださいね。
また先ほども触れたように、津村製麺所では北海道産小麦にこだわって日々製品づくりを行っています。
「北海道の良質な小麦でひやむぎを作りたい」
「代々受け継がれている技術で当時よりもっと美味しく食べていただきたい」
そんな思いから「生ひやむぎ」が誕生し、道産小麦、オホーツク産小麦にこだわった製品づくりが始まりました。
オンラインショップでは、専門店・伝統の味を自宅でそのまま味わっていただくことができます。
こだわりの素材と、先祖から守り抜いた製法で丹精込めて作った麺を、ぜひお楽しみください。
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